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知っておきたい医療と健康の話 1

東京慈恵会医科大学 松尾七重先生の写真

知っておきたい医療と健康の話 ① 私たちは、健気な臓器・
腎臓に守られているんです

東京慈恵会医科大学
松尾七重先生

今、注目の臓器といえば腎臓です。

「おしっこ」を作る役割以外、ピンとこない方が多いかもしれませんが、実は「人体の司令塔」として、重大な働きをしていることが分かってきました。

たとえば、くたくたに疲れて倒れそうなとき、“本当に倒れてしまわないよう”24時間フル稼働で頑張りつづけてくれるのが腎臓です。

東京慈恵会医科大学(以下、慈恵医大)附属病院の腎臓・高血圧内科の医師、松尾七重先生に、腎臓から考える疲労対策について教えていただきました。

医療と健康のイメージ写真

肝心要ではなく肝腎要!
腎臓は人体の司令塔です

──近頃、腎臓の知られざる役割が注目されています。どういう役割を果たしているのかを、改めて教えてください。

まだまだ「お小水を作っている臓器」ぐらいの認識しかない方も多いのですが、腎臓はほかにも、血液を作ったり、血圧をコントロールしたり、骨の健康を維持したり、さまざまな役割を果たしています。

私たちの身体は、1日1~2リットルぐらいのお小水を排泄していますが、これだけのお小水を作るために腎臓は、180リットルもの尿(原尿)を血液からろ過し、その内の99%を尿細管で再吸収して血液中に戻しています。つまり、お小水として体外に排泄されているのは原尿のわずか1%(1~2リットル)。腎臓はお小水を作って出す臓器というより、血液中をろ過して老廃物を体外に出す「フィルター」といえます。

また、骨のなかにある骨髄に命令して、赤血球を作らせるのも腎臓の役割です。骨髄、血液製造工場とも呼ばれているのですが、腎不全になると命令が出せなくなって骨髄が稼働しなくなり、貧血を起こします。

骨粗しょう症も、腎臓が上手く機能しなくなると発症します。血圧のコントロールもそうですし、身体の中を弱アルカリ性に保っているのも腎臓です。

さらに近年、注目が高まっているのはリンやマグネシウムとの関係ですね。

血液中のリンは過剰になると老化のもとになるのですが、そのリンの代謝を管理しているのは腎臓です。これには私も驚きました。ちなみにリンは、欠乏すると心不全や呼吸器不全、骨軟化症等が起きるそうです。

それからマグネシウムは、血管の石灰化を減らして若返らせ、動脈硬化等の病気を予防する効果が注目されています。マグネシウムの代謝も、基本的には腎臓が管理しています。

腰痛診察中の先生と患者の写真

──血圧の管理はどのようにしているのでしょう。

たとえば血圧を上げるホルモンも腎臓から出ています。血圧を上げると聞くと、悪いことのように思うかもしれませんが、それは身体を守るための仕組みでもあるのです。極度の脱水症状になった場合とかに血圧を上げて、少なくなった血液を少しでも多く主要臓器に集めようという仕組みで、腎臓が采配を振っています。現代社会では、飢餓状態になることはほぼありませんが、そういう生命の危機に陥ったときに働くのが、この血圧を上げる機能です。大ケガをして大量出血した場合にも、この機能が働きます。

一方で、過剰に働いて血圧を上げ過ぎると動脈硬化等、生活習慣病につながるので、悪役扱いされていますけどね。

そういう意味では、肝心要は肝腎要であるべきです。腎臓が悪くなると心臓が悪くなるし、心臓が悪くなると腎臓が悪くなる。「心腎連関」は、体内のネットワークのなかでも非常に重要です。肝臓も心臓ももちろんなくてはなりませんが、腎臓は「人体の司令塔」として、ありとあらゆることに関わってる臓器です。

松尾七重先生のインタビュー写真

腎臓が上手く働かない人は
疲れやすいといいますね

──疲れると、おしっこの色が濃くなる気がします。

そうですね、腎臓に十分な血液がめぐっていない場合に、尿の色が濃くなることがあります。たとえば健康診断や人間ドックでは、前日の夜21時から朝まで飲まず食わずにして行きますよね。そうすると、色の濃いまっ黄色のお小水になる。血液が少なくなったせいで腎臓が、(あ、これは身体に必要な水分とかをなるべく温存しなければいけない)となって再吸収した結果です。排泄する尿は少なくとも、身体にとって不要なものは捨てなければならないので、どんどん濃くなってしまうのです。

疲労が蓄積されるときって、寝食を忘れて働いたり、忙し過ぎて眠れなかったりしている場合が多いですよね。そういうときには、腎臓に行く血液も足りない状況になりがちです。

──腎臓に行く血液の量は、健康状態によって変わるんですか。

腎臓って、健気なんですよ。たとえば大出血を起こして危険な状態になったとき、せめて脳とか心臓、肝臓とかには血液を優先的に届けようとして、自分は遠慮しておくというようなことがあります。司令塔だけに、生命に即関わる臓器を優先して、真っ先に血流が乏しくなる臓器が腎臓なんです。手足なんかも、早々に血が行かなくなりますね。

──疲労から身体を守り、健康を維持するために、腎臓はどのように働いているのでしょう。

体内のさまざまなバランスを整えようと、24時間働き続けています。たとえば、水分が摂れていないときには、足らなくならないように調整したり、タンパク質を作ってエネルギーを出そうとするときには、老廃物が溜まらないようせっせとろ過したり。

腎不全で、腎臓がまったく働かなくなって透析をしている方々は、やはり疲れやすいし、疲れが抜けないとおっしゃいます。

腰痛のイメージ写真

──よく胃が疲れるとか、脳が疲れるとか言いますが、腎臓自体は、どのようなときに疲れますか。

塩分やタンパク質を摂り過ぎて、処理しなければならない量が多い状態ですね。それから太れば太るほど、腎臓がやらなければならない仕事は多くなるので、肥満も腎臓を疲労させます。あとは糖尿病みたいな病気もそうですね。腎不全になる疾患の第一位が糖尿病ですから。

頭痛や生理痛の女性がよく服用する痛み止めも、腎臓に負担をかけます。痛み止めの成分が代謝された後には、カスみたいなものが腎臓から出て、腎臓に直接ダメージを与えます。

──健気な腎臓を疲れさせないために、生活上心掛けたいことはありますか。

いろいろありますが、第一は「腹八分目と減塩」ですね。これは、健康管理全般に共通することですけど、腎臓を疲れさせないためにも有効です。

あとは太り過ぎないこと、良眠をとること、適宜運動すること。いずれも健康生活の基本ですが、外せません。

たとえば夜寝ているときは、心臓も休む時間ですけど、腎臓にも手足とかに血液を回さなくて済むので血液がめぐり、安らかで、いい働きができます。

運動は、下半身を中心に筋肉をつけるようにするのがいいと思います。お勧めは、ウォーキング+スクワットです。ウォーキングだけだと、筋肉がつかないので、少ない回数でも構いませんからぜひ、スクワットを組み合わせるようにしてください。

海沿いを水を片手に休憩している女性の写真

──先生が実践している、腎臓を疲れさせない暮らし方はありますか。

腹八分目は絶対いいと思っているので、実践しています。たとえば、ついディナーでイタリアンをお腹いっぱい食べてしまったときには、翌日のランチを豆乳ドリンクだけにするとかで、調整しています。

あとはミネラルの補給ですね。マグネシウム、カリウム、亜鉛は大切です。

──ミネラルが豊富な食品といえば牡蠣ですね。

そうですね。特に亜鉛は、最近、細胞を健康に保つ上で、いろいろなことに関わっていることが分かってきました。エネルギー代謝にもいいし、褥瘡(じょくそう=床ずれ)の治療にもいい。栄養不良の方々の血液を調べると亜鉛の数値が下がっていることが多いので、たぶん身体の中にあまり蓄積できない成分なのではないでしょうか。コンスタントに摂取することをお勧めしたいです。

松尾七重(まつお・ななえ)

中高生の頃「手に職をつけたい」と医師をめざす。1998年、東京慈恵会医科大学医学部医学科卒業後、第92回医師国家試験に合格。2003年4月、同大学の腎臓・高血圧内科に入局、助教となる。12年4月より、同大学附属病院に勤務。2017年より、東京慈恵会医科大学内科学講座(腎臓・高血圧内科)講師。腎臓・高血圧内科を選んだのは「一番面白いと思ったから。いくら勉強しても足りないくらい、学ぶべきことがあり、30年、40年取り組んでも、ずっと飽きないでいられる診療科だと思います」

松尾七重先生が校内で立っている写真

インタビューを終えて

「人体の司令塔」と言われるだけあって、身体を疲労から守る上でも、腎臓は大きな役割を果てしています。そんな腎臓を疲れさせないためには、腹八分目、適度な運動など、昔からよいとされている生活習慣をきっちりと守ることが大切なようです。

でも、言うは易しで、そう簡単にはできないから、疲れを貯めてしまう方が大勢おられます。なかなか取れない困った疲れは、どうぞ早めのワタナベオイスターDHMBAディーバゼリーで軽減してください。

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